心で感じる東洋医学
東洋医学。
私がそれに出会ったのは鍼灸学生の時でした。
その頃の私にとってのそれはただの暗記科目の一つ。
残念ながら楽しい学びとはかけ離れたものでした。
でも、今は東洋医学をとても大切に考えています。
今回はそんな私の体験や考えをお話しできればと思います。
よろしければお付き合いください。
さて、東洋医学に関心を持ち、その世界に飛び込んだもののその本当の価値や重要性がすぐにはわからなかった私。
授業は、生理学や解剖学などもありました。
例えば、坐骨神経と腰痛との関わりや、骨盤の向きと腸腰筋の関係性。そういった勉強は答えがはっきりと見え、学んでいても楽しく、どんどん実になっていくような気がしたのです。
しかしながら、東洋医学や東洋哲学になると、とたんに掴みどころがなくなる。陰陽、気血水、八綱弁証、難経六九難、、正直全然ピンときませんでした。
あれは何だったのだろう。
今になって考えてみることがあります。
先日、あるセラピストさんよりご要望を頂き、当院で“1day東洋医学講座”を行いました。
その準備をするにあたり、教科書をまた一から見直しました。
中身を見てみると、至る所に線が引っ張ってあり“国試に出る”との文字が。
今思い返してみてもよく覚えたなあと。
そう、それはやっぱり国試の為の勉強だったのです。
東洋医学が苦手だった私。でも今は好き。それはなぜかと考えてみると、今は自分の暮らしと照らし合わせ、より身近に感じれるようになったからだと推測します。
ああ、東洋医学って本当なんだなあ、とあの頃よりも心で感じているからです。
例えば、春は肝。
植物が空へとぐんぐん伸びて気も上昇する。
その元気のエネルギーがイライラとなり、ストレスに弱くなる。
気滞、気逆。
夏は心。
怒喜思優恐の喜。
春の続きで浮かれ過ぎ、頑張り過ぎに注意したい季節。
動悸、不眠、ソワソワ。
長夏は脾。
風暑湿燥寒の湿。
湿度に弱く、水分調節がしにくくなる。
いわゆる夏バテですね。去年は猛暑でこれがひどかった。
秋は肺。
肺は呼吸や免疫をつかさどる。
空気は乾燥し、コロナ、インフルエンザ等が流行り始める。
冬は腎。
冷えによって関節が痛み出す。
陰が極まり精の減退。足腰の弱り。骨盤内臓器の弱り。
いかがでしょうか。
私達の不調の多くは季節に関連して起きていると納得できないでしょうか。
私達は自然とともに暮らしています。一年を通して治療院にいると、患者様の訴えはまさにこれに則したものであると実感します。
特に陰陽の境い目にあたる春や秋は不調の人が多い。
自律神経、血圧や血糖値、ホルモン、免疫系のバランスもこれに応じて変化しなければならないのですが、身体が上手く切り替えることができず、つい病をこじらせてしまいます。
ツボ(経穴)についても身近に感じるように。
例えば、私達は驚いた時「ああびっくりした」と言って両手で胸を押さえます。
それは、おおよそ胸にある“膻中 (だんちゅう)”というツボの位置ではないでしょうか。膻中は、心の緊張を和らげたり、気分の落ち込みを改善させる効果があることで有名なツボです。
また、私達は何か失敗した時、「ああ、しまった」と目頭を手の平で押さえます。
そこは、おおよそ“印堂 (いんどう)”というツボであり、これもストレスに関係が深く、イライラしていると眉間にシワが寄るところです。
これらの動作は、誰に教えられることもなく自然に行っているもの。
そう考えていくと、ツボはツボ押しのためだけにあるものでは決してなく、ごくごく身近に存在していることがわかります。
これから東洋医学を学ぼうとしているセラピストさんや学生さんなどにはぜひ、そんなふうに親しみをもってそれに接して頂けたらと考えています。
私自身、東洋医学は未だにわからないことだらけ。
けれど、私はそれでいいと思っています。
わからないことはわかったふりをせずに。
素直に感じたままに。
今日も都市の大病院などでは、たくさんの患者様が通院されています。
そこで行われている治療は現代の医学である西洋医学です。
それは効率的、かつ合理的にテキパキと右から左へ患者様を診ていくのに最適な医学でしょう。
一方、非効率ではあるものの患者様一人一人にじっくり寄り添い、オーダーメイドのように治療していく漢方や東洋医学。これはこれで必要としている方がいらっしゃるのも事実です。
どちらも楽しく学んでいけたらいいですね。
今回、受講して頂いたセラピストさんにおかれましては、このような機会を与えて下さって本当にありがとうございました。感謝いたします。
またお声があればお応えしていきたいと思っています。
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